2022年6月にあった愛媛県松山市役所からの紹介案件ですが、松山市B町にある現地を見たところ、三角地に建った古家が二棟放置されていました。所有者は神奈川県在住で、まもなく所有名義人の奥さん(高齢)から協会に電話が入ります。『自分は高齢で松山市へは行けないので、放置している空き家の中にある動産や仏壇の処分をお願いしたい。』とのこと。
やがて鍵が送られてきたので、内部の確認をした上で、仏壇の処理は菩提寺にお願いし、いずれ解体となる建物の工事見積をとり準備していたところ、『入院していた所有者(ご主人)が亡くなった。自分が相続をすることになるが、自分には子供もおらず松山市とは縁もなくなるし、この際、処分をしたいので売却をお願いしたい。いずれ手続をお願いしている資格者に松山へ行ってもらうので打合わせをして欲しい。』と言ってこられました。
そこで調べると、先の空き家のある三角地(約100㎡)だけでなく、松山市道を挟んだ対面にも約770㎡の更地があり、両方とも処分したいとのこと。この市道の路線はほとんどが幅員6mほどある交通量の多い生活道路で、この二つの土地の前だけが幅員が約4.5m、この約60mほどの区間だけ狭く絞られているため、常時車が停滞する場所になっていました。(航空写真1参照)

そこで、まず、市の道路河川整備課へ出向き、「この土地の所有者に相続が発生し、相続人から売却したいということで当協会に依頼があった。ついては、おそらく長年懸案となっていたと思われる場所だが、この際拡幅に協力したい。」旨伝えると、課としても優先的に取り組みたいと言っていただけました。(市による買収もしくは寄付)
この案件についても理事会に諮り、入札方式での売却がよいだろうということになり、そのことを先方に伝えると、所有者も代理人資格者も遠隔地のため、この土地の売買価格の相場について全くわからないので、入札で行うなら最低価格を示してほしいということになり、慎重に検討した上で最低価格を示し、了解を得られたので入札を実施することになりました。
入札要領を配布した後、入札参加希望の会員さんが調査をしたところ、前面道路内にある公共下水道の利用ができないようだとの連絡をいただき、今度は松山市下水道整備課へ出向きました。説明を受けると、『この本管は深いところにある推進管で、容易に接続できるサービス管がこの土地の区間は整備されていない。また、この土地の前後の区域は2026年度にサービス管整備事業区域に指定されているが、この土地の区間のみ指定区域にもなっていないためすぐには供用ができない場所である』との回答でした。
そこで、今回、道路の拡幅を目指して道路河川整備課とも協議中であることの経過を説明し、道路整備課と下水道整備課が連携して協議をしてもらうこととなりました。その結果、でき得る限り早く実現するよう対応する約束を取り付けることができ、入札を実施したところ、入札者も複数(全て宅建業者)あり最低価格をクリアした落札結果となりました。
その後、道路の拡幅も果たすことができ、近隣に小学校もあることから、地域住民からも長年悩みの種であったのが劇的に解決したことに驚かれ、大変喜ばれる結果となりました。
落札者の土地取得後の土地の有効再生について
今回の対象地は、道路を挟んだ両方とも土地の画地条件としては不正形である。約770㎡の土地については、実測の結果10%程の出坪(地積増)があり、それなりに最終処理ができる土地でしたが、100㎡の土地については狭小三角地により単独では利用しにくい土地と言わざるを得ないものです。
そこで、この土地の西隣に更地になっている二つの宅地があり、調査したところ、この二つの土地は建築基準法の道路に接していないため、建築ができない土地になってしまっており、どちらも所有者は手に余しており売却が出来るものなら早く手放したいと考えておりました。そこで、落札者はこれらの土地を購入し一体化することで有効活用のできる良好な土地に生まれ変わらせることができます。

この経緯を見ると、このような課題のある場所の土地を有効なものに変えるために、役所への陳情や協議をする仕事は、まるで市議会議員が活躍するようなことを当協会がしているようなものかもしれません。こういうことができるのも「非営利のNPO法人」がよい街づくりを意識した取組みをしていることを訴え、また、空き家問題の解決のため松山市と協定を結んで活動していることで、市担当課とのパイプができていることなどが作用したのではないかと思われ、営利の法人一社だけの陳情ではこのようには行かないのではないかと考えます。
当協会の構成員である会員は、ほとんどがそれぞれ不動産関連の事業者ではありますが、個々では限界のあることを、協会として取組み成果を出していく、これこそが私たちが共に知恵を出し合い、社会のお役に立てる、当法人の存在意義であると考えます。
以上
事例提供
特定⾮営利活動法⼈ 愛媛県不動産コンサルティング協会(地域ワーキング・グループ)
竹内 学(公認 不動産コンサルティングマスター)
十亀 文雄 (公認 不動産コンサルティングマスター)