概略
平成8年(1996年)の火災により長らく空地と空き家化が進んだ6区画を集約して、株式会社八清と都市居住推進研究会が協働し、建築基準法第43条第2項第2号の特例許可を受けて4棟の長屋を新築した事例。袋路の土地権利所有者全員の追跡調査と話し合いが難航し6年の歳月を費やしたが全員の合意を得ることができ、また、1.8m未満の袋路(再建築不可)であったが、非常時の二方向避難と幅員の拡幅(3m)、建物の耐火性能アップ(準耐火構造)、非常ベルの設置、路地の利用と管理に関するルールの共有などを行うことにより、特例許可を得て4棟の長屋を新築することができた。


着眼点
⾒直される路地での暮らし
京都市内には約4,330本もの袋路があると言われており、これに面する住居の空き家化や建物の老朽化が進んでいる。袋路内に建ち並ぶ家の多くが建築基準法上の道路に2m以上接道していない建物で再建築不可の場合が多い。再建築不可の建物は土地そのものの利用価値や資産価値も低いとみなされてしまう上、安全性、都市防災上でも課題のひとつとされてきた。
しかし、京都の路地には伝統的な建築による歴史的な景観と文化が残り、路地ならではのコミュニティが継承され、持続可能なまちづくりを考えられる。近年地価が高騰し続ける京都市都心部において、子育て世帯が郊外や市外に流出しているなか、路地には若年・高齢の単身者等が適切な住居費負担で暮らせる住宅としての役割を果たすことも期待できる。路地は車両が入って来ることがなく、関係者以外の往来が少ないので、子どもを遊ばせるには最適な場所である。そのため本プロジェクトでは子育て世帯をターゲットとして、子どもがいる世帯が暮らしやすい住まいとして設計を試みた。
結果
まず子育て世帯に向けた貸家として賃貸募集。1組は単身世帯だが、残り3組は子育て世帯が入居。(子育て支援として子供のいる世帯に対しては賃料5,000円の割引を実施)その後、貸家のオーナーとして社会的意義に賛同いただけき、3棟一括と1棟との2組の購入者への売却に成功した。近隣の同意を得るのに年月と労力はかかったが、行政や民間企業・団体が協業した路地再生の事例のひとつとして、持続可能な京都のまちづくりに貢献する。



情報提供
株式会社 ⼋清
取締役会⻑ ⻄村 孝平(公認 不動産コンサルティングマスター)