プロローグ
2019年初めに、愛媛県松山市に土地を所有している県内在住の相談者Aの息子さん(県外在住)から、ホームページを見たと当協会に相談の問合わせがあり、親子そろって相談窓口に来られました。
お話を聞くと、松山市M町に長らく解決ができず放置している土地建物があり、権利関係が複雑なため、息子さんが弁護士へ相談しても難しいと言われ頓挫してしまっているとのこと。
基礎調査の上、検討してみることをお約束し、当協会の顧問的な存在である司法書士と土地家屋調査士を紹介し、難しい案件であり、この先どのように向かうかわからないが委任を頂けるなら取り組んでみると回答をし、司法書士と土地家屋調査士へ委任することになりました。
概要は、土地を相続して長く経つが、その土地の上に建っている空き家建物が他人名義となっている。どのように解決すればいいのかわからない、というもの。
土地家屋調査士による既存建物の床面積・構造・新築年月などの詳細の調査により既存の空き家建物は、登記されたものとは異なる建物であり、登記の残っている建物はすでにかなり前に取り壊されているということがわかりました。そこで、空き家建物は解体することとし、当該土地上に登記だけ残っていた他人名義の建物滅失登記も無事に完了し、更地にしようということとなりました。弁護士からも難しいと言われていたので、感謝されました。
ここで一件落着となったのですが、この土地は要らない土地なので、売却のお世話をして欲しいということになり、当協会理事会で協議をし、会員を対象としたもしくは会員を窓口とする入札を実施することに。500㎡程の土地でしたが結果好条件で短期間に売却することができました。
第⼆の依頼
話はこれで終わらず、実は、同じM町に1,200㎡程の市街化農地があり、耕作してもらっていた方が高齢となり、もう耕作ができないと言われたので、この土地も売却して欲しいとのこと。最初の問題解決により、当協会は所有者から絶大なる信頼を得たのです。その証拠に『金額はいくらでもよい、お宅の協会の好きにしてもらったらよい。すべて任せる。』と言っていただきました。
ただこの土地は、ロケーションとしては住宅分譲地に適するものでありましたが、間口12m、奥行95m、二方道路の南北に長い形状でした。そこで隣接地(宅地~貸家として利用)の所有者へ、開発道路用地として一部提供していただけないかとお願いすることに。お互い出し合った開発道路はいずれ松山市へ寄付をするので公道となった暁には、隣地の資産価値もアップすると訴え、了承していただきました。先の土地の問題の解決に奔走してくれた土地家屋調査士に開発プランを作ってもらい、分譲用地として入札を実施したところ、19社もの入札があり、高値で売却ができたのです。

まとめ
愛媛県不動産コンサルティング協会は、1995年に任意団体として設立し、2003年にNPO法人化した団体で、現在、県内の不動産コンサルティングマスター、不動産鑑定士、税理士、建築士、宅建士36名で構成された団体で、毎年講演会や会員向け研修会を実施しており、2015年からは「空き家対策事業」に取り組み、国土交通省の「空き家管理等基盤強化推進事業」の支援対象団体として採択され、愛媛県内対象の空き相談窓口を設置し、空き家相談数は2023年度末時点で、345件に上っています。
また、この間、愛媛県をはじめ県内20市町と連携をとり、県庁所在地の松山市とは、「空き家対策の推進に向けた連携と協働に関する協定」を締結し、問題化した空き家の解決へ向け積極的に活動しております。
今回の事例につきましては、当協会のホームページ 特定非営利活動法人 愛媛県不動産コンサルティング協会 | ホーム (ehime-consul.jp) を見て問い合わせをしてこられた案件であり、これらの相談は、協会として受け付け、空き家対策委員会にて協議をした上で担当者や方針を決めて進めて行きます。この事例のように事業化できる案件は少なく、また結果事業化できたとしてもそれにはかなりの知見やスキルが必要となりますが、会員がみんなで取り組むことで知恵を出し合い、解決してきております。さらに難問の解決には、手間のかかる仕事も厭わない専門資格者との協力関係の構築も不可欠といえます。
私たちの協会の倫理綱領には、「依頼者や相談者の利益と幸せを常に第一に考える」、「地域やまちが、次世代に向けて良いコミュニティになることを常に考えながら業務を行う」というものがあります。今回も、その考え方を以て取り組んだため、依頼者・隣接地所有者・開発業者・地域、すべてによい結果を導くことができたと感じております。
また、道路の一部提供のお願いについても「非営利のNPO法人」としての呼びかけであったため、うまくいったのではないか?もし営利目的の開発業者がお願いしてもこのようにはうまくいかなかったのでないか?と考えると、当協会が関わることの意義はあったと考えます。
以上
事例提供
特定⾮営利活動法⼈ 愛媛県不動産コンサルティング協会(地域ワーキング・グループ)
⽵内 学(公認 不動産コンサルティングマスター)
⼗⻲ ⽂雄(公認 不動産コンサルティングマスター)